JetBrains IDE Provisioner & License Vault による開発環境のセキュリティ向上とコストの最適化
こんにちは JetBrains 堀岡です。
企業におけるソフトウェア開発が複雑化する中、開発環境の管理はますます重要な課題となっています。特に IT 管理者や開発マネージャーの皆様は、以下の課題に直面しているのではないでしょうか。
- 開発環境のセキュリティリスクに対する備えは十分か?
- 新しいメンバーがすぐに開発を始められるよう、環境構築を効率化できているか?
- 増え続けるソフトウェアライセンスを本当に有効活用できているか?シャドーIT対策はできているか?
本ブログ記事では、2025年 3 月に開催した JetBrains Executive Summit Tokyo の以下の発表資料(Google Slide / PDF)をベースに、JetBrains がエンタープライズ向けに提供するソリューションスイート「JetBrains IDE Services」 に含まれる製品「IDE Provisioner(IDEプロビジョナー)」 と「License Vault(ライセンスボルト)」がこれらの課題をどのように解決するのかを紹介します。

エンタープライズ企業における開発環境の3つの課題
セキュリティとコンプライアンス
近年、開発ツールやその拡張機能(プラグイン)の不具合やマルウェアが混入疑いの事例が報告されるなど、ソフトウェアサプライチェーン攻撃のリスクは無視できません。OSS や複数ベンダー製品の組み合わせによる開発環境の生産性向上が広まりつつある一方で、金融や防衛分野など、高いセキュリティが求められる企業では、安全性が確認されたツールのみ利用を許可し、脆弱性が発見された際には迅速に対応できる体制が不可欠です。JetBrains では SOC 2 Type 2 対応等のセキュリティに対する取り組みを Trust Center で公開しています。
開発環境の標準化と生産性
開発者ごとに IDE のバージョンや設定が異なると、再現性のない不具合やチーム全体の生産性低下につながります。一方で、新しいメンバーのオンボーディングでは、開発環境の構築に多くの時間が費やさることは少なくありません。プロジェクトに最適化された環境を、簡単に全メンバーに展開できる事は、開発生産性に対して重要です。
複雑化するライセンスとコストの管理
サブスクリプション型のツールが増える中、ライセンスの購入、配布、そして異動者や退職者からの回収といった手作業での管理は、担当者にとって大きな負担です。さらに、「購入したものの使われていない」ライセンスはコスト増につながります。
JetBrains IDE Services による解決策
JetBrains IDE Services は、これら 3 つの課題を解決するために設計された、エンタープライズ規模での開発者生産性向上を支援するスイート製品です。提供形態としては、JetBrains が SaaS として提供するクラウド版(IDE Services Cloud)とお客様が自身の開発環境にインストーするオンプレミス版(IDE Services On Premise)があります。
今回は、IDE Services に含まれる 2 つの機能 IDE Provisioner と License Vault をご紹介します。
開発環境の標準化とセキュリティを両立する「IDE Provisioner」
IDE Provisioner は、IntelliJ ベースの IDE (Android Studio も含む)を組織全体で一元管理するためのソリューションです。これにより、「セキュリティの徹底」と「開発環境の標準化」という課題を解決します。
IDE Provisioner を利用する場合、開発者は Toolbox App 経由で組織専用の IDE Services サーバーにアクセスし、IDE のライセンスや設定情報を入手します。こちらで手順が紹介されていますが、開発者にとって必要なことは専用ページからリンクをクリックするだけです。

IDE Provisioner の主なメリットは以下の通りです。
IDE とプラグイン利用の統制
管理者は、組織として利用を許可する IDE のバージョンやプラグインを指定できます。脆弱性のあるバージョンを制限したり 、未許可のプラグインのインストールをブロックしたりすることで 、開発環境のセキュリティを向上させることが可能です。
以下のように管理者は IDE Provisioner 側で、特定のプラグインやプラグインベンダーのみインストールを許可することができます。設定した情報は Toolbox App 経由で開発者に展開されます。
これにより、開発者は許可されたプラグイン以外はインストール・有効化ができなくなります。
また、以下のように古いバージョンの IDE を使用できないように制限することも可能です。
IDE 設定の自動展開
プロジェクトに最適化された IDE 設定(例:メモリ割り当ての変更)や必須プラグインを、管理コンソールから全開発者に自動で配布できます。これにより、開発者のオンボーディングがスムーズになり、環境差異によるトラブルも未然に防ぎます。

管理コストの削減
これまでナレッジベースによる情報共有、手作業や独自の内製ツール等で行っていた環境設定や更新作業を自動化し、開発者およびチームによる開発環境管理コストを削減します。
ライセンス管理を自動化し、コストを最適化する「License Vault」
License Vault は、煩雑なライセンス管理を自動化し、コストを最適化するためのソリューションです。
License Vault の主なメリットは以下の通りです。
ライセンス配布・回収の完全自動化
Okta や Microsoft Entra ID などのさまざまな ID プロバイダーとの SSO 連携に対応しており 、開発者は SSO でログインするだけで、ライセンスプールからライセンスを取得できます。
また、一定期間利用されていないライセンスは License Vault により自動で回収(利用者へのライセンス割り当てを解除)されるため、「遊休ライセンス」をなくし、利用率を最大化します。

利用状況の可視化によるコスト最適化
ダッシュボードでライセンスの利用状況が一目で分かります。正確なデータを基に、サブスクリプション更新時の購入数を最適化し、不要なコストを削減できます。

柔軟な支払いオプション
JetBrains 製品をすでにご利用中のお客様の場合、お手持ちの購入済み(Prepaid)ライセンスが不足した場合、不足数を月払いライセンスの従量課金(Postpaid)で自動的にカバーする設定が可能です。これにより、急な増員にも柔軟に対応しつつ、ライセンス不足による開発の停滞を防ぎます。一方、JetBrains 製品の利用を新規に開始するプロジェクトの場合は、上限ライセンス数を設定した上で、完全従量課金にすることも可能です。これにより、予算の範囲内で、ライセンスの配布の自動化と利用コスト最適化することができます。

まとめ
JetBrains IDE Services は、エンタープライズ開発環境におけるセキュリティ、生産性、そしてコスト管理の課題を解決するための統合ソリューションです。
- IT 管理者へのメリット セキュリティとコンプライアンスを確保しながら、管理業務の負担を大幅に軽減できます。
- 開発マネージャーへのメリット チームの生産性を向上させ、予算を最適化することが可能です。
- エンジニアへのメリット 面倒な環境構築から解放され、本来の開発業務に集中できます。
JetBrains IDE Services は、IDE ライセンスを 50以上ご契約のお客様であれば、JetBrains Account からすぐにお試しいただけます。お試し方法はオンラインマニュアル(英語)または日本語トライアルガイドをご覧ください。
詳細は以下のページをご覧いただくか、JetBrains 日本向け営業窓口までお問い合わせください。Customer Success チームによるデモや環境構築支援も可能です。
- JetBrains IDE Services 日本語ウェブサイト
- JetBrains IDE Services Cloud オンラインマニュアル
- IDE Services/License Vault トライアルガイド(Google Slide)
- JetBrains 製品の法人ライセンス購入や管理を効率化するためのソリューション