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2025 年 Python の現状

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これは、Talk Python の創設者であり PSF Fellow である Michael Kennedy 氏によるゲスト投稿記事です。

2025 年 Python の現状

第 8 回目の年次 Python 開発者アンケートのハイライト、トレンド、および主な対応事項についてご紹介します。 このアンケートは、Python Software Foundation と JetBrains の PyCharm チームの提携によって実施されています。

Michael Kennedy と申します。私は 30,000 件を超えるアンケート回答を分析し、最も注目すべきトレンドと予測を導き出し、皆さんの Python 業界におけるキャリア向上につながるさまざまな対応事項を明らかにしました。

私は「Talk Python to Me」ポッドキャストのホストというユニークな立場にあります。 過去 10 年にわたり、Python エコシステムの最も重要なライブラリと言語のトレンドを支える人たちに毎週インタビューしてきました。 この記事では、この比較的大規模なコミュニティでの経験を活かし、毎年実施されるこの重要なアンケートの結果を理解することを目的としています。

ご自身の仕事や製品・サービスが Python のトレンドに左右される方、あるいは広い意味で Python 開発に携わっている方は、ぜひこの記事をお読みください。 他の情報源からはつかみにくい多数のインサイトを得られます。

2025 年の Python の主なトレンド

早速ですが、Python アンケートの結果に基づいて最も重要なトレンドを見てみましょう。 

2025 年の Python の主なトレンド

Note: 2025 年 Python の現状
30,000 人以上の Python 開発者から集めたアンケートの回答に基づきます。

* 50% の Python 開発者は業務経験年数が 2 年未満です。
* 51% がデータの探索と処理に Python を使用しています
* 46% がウェブ開発に Python を使用しています
* FastAPI の使用率は 1 年で 29% から 38% に伸びました
* 83% が依然として古いバージョンの Python を実行しています
* 3 人に 1 人が OSS に貢献しています。
✔️ 78% がコードを作成
✔️ 40% がドキュメントを作成
* ウェブサーバーは非同期や Rust ベースのツールにシフトしています

Python の今後の方向性
* 69% が AI コーディングエージェントを試す予定です。 エージェント型 AI の採用率が急速に高まると予測されます。
* 並列スレッド処理が Python 3.14 で導入されます。 async、await、およびスレッドは不可欠です
* GUI およびモバイル開発が伸びています

2025 年に実現可能なアイデア
✔️ エージェント型 AI を試して生産性を向上させる
✔️ uv を学習してパッケージ管理を高速化させる
✔️ 初心者に優しいコンテンツとツールを維持する

Python 開発者アンケートは、Python Software Foundation と JetBrains PyCharm による共同の取り組みです。

上記のインサイトを詳しく見てみると、プロジェクトに適したツールを持つことで大きな差が生じていることが分かります。 無料の PyCharm を試し、1 つの強力な Python 用 IDE でデータサイエンス、ML/AI ワークフロー、およびウェブ開発に必要なあらゆる機能を手に入れましょう。

Python 開発者は Python を使用している

まずは Python が Python を使用する開発者にとっていかに中心的な存在となっているかをお話ししましょう。 Python 開発者は主に Python を使用しています。 分かりきったことをわざわざ言っているように聞こえるかもしれませんが、 開発者は主要言語ではない多くの言語を使用するものです。 たとえば、ウェブ開発者は Python、C#、または Java を主に使用していても、CSS、HTML、さらには JavaScript も使用しているかもしれません。

その一方、Node.js か Deno を主に使用する開発者は JavaScript も使用するものの、それを主要言語として使用しているわけではありません。

このアンケートでは、86% の回答者が Python を主要言語として使用し、コンピュータープログラムの作成、アプリケーションの構築、API の作成などに従事していることが示されています。

Python の使用率統計

Note: Python の一般的な使用: 主要言語と第二言語
* 第二言語 14%
* 主要言語 86%

開発者のほとんどが駆け出しのプログラマー

約 30 年間コードを書いてきた私自身も含め、プログラミングに長年従事してきた開発者は、業界のほとんどの人はそれなりの経験を持っていると思いがちです。 そう思うのも無理はありません。 カンファレンスに行けばプログラミングに 10 ~ 20 年携わってきた人たちと話す機会がありますし、 同僚は長年 Python を使用してプログラミングを続けてきた人たちばかりだからです。

ただし、より広範な Python エコシステムではそうではありません。

回答者のちょうど 50% が、コーディング業務の経験年数が 2 年未満なのです! しかも、39% は Python の経験年数が 2 年未満です(ホビイストの方や教育の場での使用でもです)。

Python の回答者に関する情報

Note: コーディング業務の経験年数はどのくらいですか?
* 1 年未満 31%
* 1~2 年 19%
* 3~5 年 20%
* 6~10 年 13%
* 11 年以上 17%

この結果から、Python がキャリアの初期段階にある人に適した言語であることを再確認できます。 単純な(しかし単純すぎない)構文と親しみやすさは、駆け出しのプログラマーだけでなく、経験豊富なプログラマーにとっても非常に魅力的です。 既存の開発者の多くがプログラミングと Python に愛着を持っており、その感情を喜んで新しいコミュニティメンバーと分かち合っています。

逆に言えば、コミュニティ向けのコンテンツを制作する場面では、この回答者に関する情報を考慮する必要があるということです。 チュートリアルやデモ動画を制作する場合は、手順を省略せず、取り組みやすくしなければなりません。 たとえば、単にパッケージをインストールするよう指示するだけでは駄目なのです。 仮想環境を作成する必要があることを伝え、それを作成して有効化する方法を示す必要があります。 その仮想環境にパッケージをインストールする手順を案内するようにしてください。

JetBrains のようなツールベンダーに所属している方は、ユーザーの多くがプログラミング、Python そのものについてまったくの初心者であることに留意しておくべきです。 高度な機能をないがしろにしたり、製品を低機能にしたりすることを推奨しているわけではりません。そうではなく、製品を採用しにくくすべきではないということです。

データサイエンスが Python 利用分野の半数以上を占めている

今年のアンケートでは、参加した Python 開発者の 51% がデータ探索と処理に携わっており、pandas と NumPy が主に使用されているツールであることが分かりました。

Python 専門家の多くは、Python の利用分野をウェブ開発、データサイエンスと純粋科学、その他の 3 つに分けて論じてきました。

その 3 つのうちの 1 つが Python の利用分野の大部分を占めているため、Python の位置付けを再考する必要があります。

これは、現時点でデータと AI への関心が爆発的に高まっているだけでなく、この分野で活用できるツールの開発も爆発的に増加しているという状況でもあるからです。 Polars のようなデータ処理ツール、marimo のようなノートブックを使用した新しい作業手法、そして LLM、ビジョンモデル、エージェントと連携する使いやすい大量のパッケージ(Transformers、Diffusers、smolagents、LangChain/LangGraph、LlamaIndex など)が存在します。

Python の重心がますますデータ/AI 分野に移動してきているのは間違いありません

ほとんどの人は新バージョンにメリットがあっても古い Python バージョンの使用を継続している 

アンケートから、Python ランタイムの最新バージョンと古いバージョンの分布が得られました。 多くの開発者(15%)は非常に新しいリリースの Python バージョンを実行していますが、1 年以上前のバージョンを使用している開発者の方が多い(83%)ことが分かりました。

各 Python バージョンの使用率統計

Note: どの Python バージョンを使用していますか?
* Python 3.14 2%
* Python 3.13 15%
* Python 3.12 35%
* Python 3.11 21%
* Python 3.10 15%
* Python 3.9 6%
* Python 3.8 3%
* Python 3.7 1%
* Python 3.6 1%
* Python 3.5 以下 1%

このアンケートでは多数の開発者が Docker とコンテナーを使用してコードを実行していることも示されており、この 83% 以上という数値にはさらに驚かされます。 コンテナーを使用するのなら、単にコンテナー内で Python の最新バージョンを選択するだけです。 すべてが隔離されているため、Linux のシステムが提供する Python など、他のシステム構成要素との干渉について気にする必要はありません。 コンテナー化することで柔軟性が向上し、最新バージョンの Python へ移行するのが容易になると期待されます。

ではなぜ、最新バージョンの Python に更新しない人がいるのでしょうか? アンケート結果から主に 2 つの理由が分かります。

  1. 使用中のバージョンですべてのニーズが満たされている(53%)
  2. 更新する時間がない(25%)

古いバージョンの Python を実行している 83% の開発者は、思っている以上に多くのことを見逃している可能性があります。 これは単に except キーワードなどのいくつかの言語機能や、tomllib などの標準ライブラリに対する軽微な改善を見逃しているという話ではありません。 Python 3.11、3.12、および 3.13 はすべて大きなパフォーマンス上のメリットがあり、次期リリースの 3.14 にはさらに多くのメリットがあります。

素晴らしいことに、そのようなメリットをコードを変更することなく採り入れることができます。 新しいランタイムを選択するだけで、コードの実行を高速化できるのです。 CPython は極めて優れた下位互換性があり、 アップグレードに大変な苦労を要することはほとんどありません。 では、いくつかの数値を見てみましょう。

現在は 48% の開発者が Python 3.11 を使用しています。 3.13 にアップグレードすると、コードのエンドツーエンドでの実行速度が約 11% 高速化し、約 10~15% のメモリ削減を実現できます。

今も 3.10 以前を使用している 27% の開発者の場合、コードを変更することなく約 42% という驚異的な高速化を実現し、メモリ使用率を約 20~30% 削減できるのです!

それでもまた「十分に速い。 トラフィックはそれほどない」という結論に至るかもしれませんが、 ほとんどの中規模から大規模の企業であれば、これは途方もないクラウドコンピューティング費用の無駄遣いと言えます(エネルギー消費による環境被害にもつながります)。

調査により、クラウドコンピューティング(具体的にはコンピューティングベース)に関する推定額が示されています。

  • 中堅企業市場 / 中規模企業
    • AWS の年間合計請求額(中央値): 年間約 230 万 USD(vendr.com
    • EC2(コンピューティングインスタンス)の割合(請求額の約 50~70%): 年間 115~160 万 USD(cloudlaya.com
  • 大規模企業
    • AWS の年間合計請求額: 年間約 2,400~3,600 万 USD(月額 200~300 万 USD)(reddit.com
    • EC2 の割合(約 50~70%): 年間 1,200~2,500 万 USD(cloudlaya.com

これらの企業が Python 3.10 を実行していると仮定した場合、それぞれ 42 万 USD560 万 USD を節約できる可能性があります(EC2 の費用の 30% として計算した場合)。

丸 1 日かけてアップグレードする余裕がないことが原因で年間 40 万~500 万 SUD を無駄にしていることに会社が気付けば、真剣な議論が交わされるはずです。

金銭面や環境上の理由はさておき、最新の言語機能を導入し、Python コア開発者の重大な成果と歩調を合わせられることは本当に素晴らしいことと言えます。 アップグレードを最優先しましょう。

Python ウェブ開発の復活

過去数年間、Python 業界におけるウェブ開発の重要性が低下していることが話題になっていました。 これは、2 つの要因が強力に働いているためです。1 つはデータサイエンスと AI に専念する開発者が Python を使い始めたことが原因で比較的安定していたウェブ開発の割合が低下したことであり、もう 1 つはウェブがフロントエンドを中心としており、ウェブ開発者はブラウザーでの Python の動作がまだ実現していない今は JavaScript を好んで使用する傾向にあることです。

2021 年から 2023 年までの数値を見てみると、トレンドは 45% → 43% → 42% と、明らかに低下しています。 ところが今年はウェブが復活していました! 2024 年には回答者の 46% がウェブ開発で Python を使用していると報告していました。 この仮説をさらに裏付けるようにウェブの「第二」言語もそれに応じて急上昇し、HTML/CSS の使用率が 15%、JavaScript の使用率が 14%、SQL の使用率が 16% 増加しています。

Python のユースケース統計

Note: Python を何に使用していますか?
* データ解析
* ウェブ開発
* 機械学習

Python ウェブフレームワークでトップに躍り出たのは、29% から 38%(30% 増)に急増した FastAPI でした。 どの主要フレームワークも年々使用率が増加していますが、FastAPI の約 30% という急増には目を見張るものがあります。 この理由については推測しかできません。 個人的には、ウェブの分野で Python の使用率が急増した理由の一つは、Python を使用し始めた人の数が多いことだと考えています。 そのような開発者の多くは ML/AI/データサイエンス分野に従事しており、多くは Flask や Django に関する長年の経験や実績がありません。 そのような開発者は最も話題になっている Python ウェブフレームワークを選択する傾向があり、それが現時点では FastAPI ということなのでしょう。 FastAPI API の裏側で ML モデルをホストしている例はたくさんあります。

Python ウェブフレームワークの使用率

Note: ウェブフレームワークの使用率
* FastAPI
* Django
* Flask

FastAPI の使用率は 1 年で 29% から 38% に伸びました

非同期対応の Python ウェブフレームワークへの移行トレンドも続いています。 私は Talk Python に在籍中、Flask の非同期処理を使用して Python ウェブアプリを書き直しました(Python でざっと 10,000 行です)。 Django は着実に非同期機能を追加しており、その機能はほぼ完全にサポートされています。 ただし、現在のバージョン 5.2 では DB レイヤーにもう少し手を加える必要があります。なぜならば、チームによって「ORM の非同期サポートと Django のその他の部分に引き続き取り組んでいる」との声明が出されているためです。

Python ウェブサーバーは非同期のツールと Rust ベースのツールにシフトしている

Python ウェブアプリをホストしている本番アプリサーバーと API にも変化が起こりつつあることも簡単に触れておきましょう。 ここでは 2 つの要因が働いているようです。1 つは非同期フレームワークへの移行に WSGI だけでなく ASGI もサポートするアプリサーバーが必要であること、もう 1 つは Python のコードを高速に実行する場面で Rust がさらに中心的な存在となってきていること(詳細は後述します)です。

この分野における昨年の最も大きな損失は、uWSGI の完全な終焉でした。 Python Bytes ポッドキャストでは、「We Must Replace uWSGI With Something Else」(uWSGI から代替サーバーへの移行が必要)と題してこの状況を詳しく検証したほどです。 

また、単独で稼働できる uvicornHypercorn などの非同期ネイティブのサーバーを使用することで、Gunicorn の非同期ワークロードの処理が減ることを確認しています。 Granian などの Rust をベースにした新しいサーバーも確固たる支持を得ています。

Rust が目下 Python の高速化に使われている

Rust は過去数年間にわたって Python のパフォーマンスを支えてきました。 2025 年の Python Language Summit では、「新しいプロジェクト用に PyPI にアップロードされているネイティブコード全体の 4 分の 1 から 3 分の 1 で Rust が使用されている」ことが発表され、「開発者が Rust を使用して新しいプロジェクトを開始することを選択している」ことが示されました。

このアンケートの結果を見ると、Python パッケージのバイナリ拡張における Rust の使用率が 27% から 33% に増加しているのが分かります。  

Python のバイナリモジュールをビルドするための言語に関する統計

Note: Python のバイナリモジュールをビルドするための言語
* C++
* C
* Rust

この状況はエコシステム内で確認されており、データサイエンスの分野で Polars が、ほぼすべての分野で Pydantic が成功していることが分かります。 比較的新しい Granian などの Python アプリサーバーについても同じ状況を確認できます。

型付きの Python がツール分野で上昇

今年のもう 1 つの重要なトレンドは型付きの Python です。 以下のように関数定義で Python の型情報が指定されているのを見たことがあるかと思います。 

def add(x: int, y: int) -> int: ... 

このような型情報は以前から Python に存在するものですが、 型付きの Python をより一般的化し、かつ寛容的にする新たな取り組みがあります。 mypy などのツールは型付けの初期段階からありましたが、その目的はプログラム全体の一貫性を重視したものでした。 過去数か月間に 2 つの新しい高パフォーマンス型付けツールがリリースされています。

  • Astral の ty – Rust で書かれた非常に高速な Python 型チェッカーおよび言語サーバー
  • Meta の Pyrefly – Rust で書かれた高速な Python 型チェッカー

これらは次世代の型チェックツールの座を争っています。 また、どちらのツールも極めて高速な言語サーバープロトコル(LSP)を提供しています。

これらの類似点に気付きませんか? どちらも Rust で書かれており、前述の「Rust が Python のパフォーマンスを支えるようになった」という点を裏付けています。

ちなみに、私は数週間前に ty が発表された際にその開発チームにインタビューしました。このプロジェクトについて詳しく知りたい方はご覧ください。

コードとドキュメントがオープンソース貢献のほとんどを占めている

オープンソースには多種多様なユニークな方法で貢献することができます。 ほとんどの人は貢献者について考えた場合、それはコーディングして新機能をプロジェクトに追加する人を真っ先に思い浮かべるのではないでしょうか。 しかし、プルリクエストをレビューする際に課題に優先順位を付けるなど、あまり目立たないものの重要な貢献方法もあります。

では、コミュニティの何割がオープンソースに貢献したことがあり、どのように貢献しているのでしょうか?

このアンケートでは、開発者の 3 分の 1 がオープンソースに貢献したことが分かりました。 それは主に、コードやドキュメント/チュートリアルの追加です。

Python のオープンソース貢献に関する統計

Note: 昨年はオープンソースにどのように貢献しましたか?
* コード 78%
* ドキュメント / サンプル / 教育 40%
* メンテナー / ガバナンス / リーダーシップ 35%
* テスト 33%

ドキュメントが一番

開発者やデータサイエンティストは主にどこで学習しているのでしょうか? 回答者はドキュメントを最もよく使用していると答えています。 言語とライブラリの学習方法は多いですが、ドキュメントが最も人気があります。 これはオープンソースの保守担当者にとっては朗報です。 ドキュメント(および組み込みのチュートリアル)にかけた努力の成果が有効に活用されていることを意味するからです。 これは、明確かつ簡単にプロジェクトのユーザーエクスペリエンスを向上させるための手段であると言えます。

また、これは JetBrains の Paul Everitt などの経験豊かな Python 開発者を交えた「Developer Trends in 2025」というポッドキャストで配信されたパネル討論のエピソードの内容にも合致しています。 パネリスト全員がドキュメントが一番であることに同意しているものの、アンケートでは YouTube が 51% で ドキュメントより上位になっています。 これはコミュニティの平均経験年数が 1~2 年であり、45% が 30 歳未満であるからでしょう。

新たに台頭しているのは、よく耳にする(そして多くの人が使用している)一連の AI ツールです。 学習リソースとしての AI ツールは 19% から 27% に伸びています(前年比 42% 増)!

Python 開発者が認めるデータベースの王者は PostgreSQL

どのデータベースを選択したかという質問については、PostgreSQL と答えた回答者が圧倒的に多かったです。 PostgreSQL は Python データベースの王者であり、43% から 49% へと伸びる一方です。 前年比では +14% であり、28 周年を迎えたオープンソースプロジェクトとしては目覚ましい伸び率です。

Python 開発者が使用するデータベースの統計

Note: どのデータベースをご利用中ですか?(複数選択可)
* PostgreSQL
* SQLite
* MySQL

ここで興味深いのは、PostgreSQL が多く使用されていることだけでなく、上位 6 位に入ったすべてのデータベースの使用率が前年よりも増えていることです。 これは、前述のようにウェブ開発そのものが伸びていることを示している可能性があります。

今後のトレンド

エージェント型 AI が大活躍

私が最初に予測しているトレンドは、エージェント型 AI がコーディングのゲームチェンジャーとなることです。 エージェント型 AI は悪評高くも人気の高いバイブコーディングのツールとしてよく名前が挙がります。 しかし、「バイブコーディング」のせいで、優秀なエンジニアやデータサイエンティストがエージェント型 AI を使用すると生産性が著しく向上するという事実に気づきにくくなっています。

PSF の管轄外のアンケートにより、2023 年には約 70% の開発者が AI コーディングツールを使用中または使用予定であり、2024 年までに約 44% のプロ開発者が AI コーディングツールを日常的に使用するということが分かりました。

JetBrains の 2023 年開発者エコシステムの現状レポートでは、「AI ベースのコード生成ツールはわずか数年で興味深い研究トピックから多数の開発者のツールボックスの重要な構成要素に変わりました」と述べられています。 時を 2025 年に進めましょう。2025 年開発者エコシステムの現状アンケートを見てみると、回答者の約半数(49%)が来年中に AI コーディングエージェントを試す予定だということが分かります。

AI コーディングエージェントの使用率統計

Note: 今後数か月以内に AI コーディングエージェントを試す可能性はどれくらいありますか?
* 非常にある 49%
* ある程度ある 20%
* 分からない 10%
* ほぼない 4%
* まったくない 6%
* すでに AI コーディングエージェントを使用している 11%

大手テック企業のプログラムマネージャーは、エージェント型 AI を受け入れない開発者が就業の機会を得る可能性は皆無に等しいと述べています。 エージェント型 AI を使用している開発者とそれを避けている開発者の生産性の差が単に大きすぎるのです(AI を使った方が生産性が約 30% 高いと判断されています)。

asyncawait、スレッド処理が Python の基本となりつつある

今後は、並行性と Python が話題の中心になるでしょう。 Python ウェブフレームワークとアプリサーバーが非同期実行に移行し始めていることはすでに取り上げましたが、これは強力なトレンドの一部に過ぎません。

Python 3.14 は、フリースレッド Python をサポートする Python 初のバージョンとなります。 フリースレッド Python は GIL(グローバルインタープリターロック)を使用しないバージョンの Python ランタイムであり、実験的機能として初めて CPython 3.13 に追加されました。

運営委員会とコア開発者は先週、これを言語とランタイムの固定的な要素として正式に承認しました。 この事実は広範囲に影響を及ぼすことになるでしょう。 開発者とデータサイエンティストは、ロックとレースコンディションを伴うスレッド化されたコード、およびそれがもたらすパフォーマンス上のメリットをより慎重に考慮しなければならなくなるでしょう。 パッケージ保守担当者、特にネイティブコードの拡張機能を扱う担当者は、フリースレッド Python をサポートするようにコードの一部を書き換えることで、レースコンディションやデッドロックの発生を阻止する必要があるかもしれません。

これには大きなメリットもあります。 私は最も安価な Apple Mac Mini M4 でこの記事を書いていますが、 このコンピューターに搭載されている CPU コアは 10 個です。 つまり、この変更が Python に反映されるまでは、単一の Python プロセスから得られる最大パフォーマンスはマシンの実際の能力の 10% になります。 フリースレッド Python が完全にエコシステムに組み込まれたら、スレッド処理と async / await キーワードを使用する標準的な Python プログラムでの最大能力にかなり近づくに違いありません。

async キーワードと await キーワードは、単なる並行処理コードを多用したいウェブ開発者向けの手段ではありません。  その活躍の場はだんだん増えています。 私が最近知ったそのようなツールの一つに、Temporal があります。 このプログラムは asyncio イベントループを利用していますが、標準の巧妙なスレッド処理手法を永続的かつ複数のマシンを横断して実行される仕組みに置き換えます。 単に何らかのアクションを待機しているようでも、その裏側ではマシンが再起動しても止まるなく永続的に実行が行われています。 Temporal のように asyncawait を興味深い方法で使用するツールが増えるにつれ、これらのキーワードを理解する重要性が増していくでしょう。

ここには、Pydantic によって多くの開発者がこれまで以上に Python の型付けに興味を持つようになったという類似点が見られます。

Python GUI とモバイルの台頭

最後に予測されるトレンドは、Python GUI とモバイルでの Python が台頭することです。 iOS や Android 上のネイティブアプリについて考えた場合、それらを近い将来に Python で構築できるようになることを夢見ることしかできません。

2025 年の Python Language Summit では、Russell Keith-Magee 氏が iOS と Android を CPython のティア 3 サポート対象のプラットフォームにする取り組みを発表しました。 これは PEP 730 と PEP 738 で説明されています。 これは、Python を使用してアプリストアに出荷できる真のネイティブアプリを作成できるようにするための必要条件ではありますが、十分条件ではありません。

より一般的には、Python の UI に関する興味深いアイデアと新しい解釈がありました。 fast.ai の Jeremy Howard 氏には、モダンなウェブアプリケーションを純粋な Python で作成できる FastHTML を紹介してもらいました。 NiceGUI は、純粋な Python でウェブアプリや PWA を作成できる優れた方法として人気が高まっています。

これらの変更(特にモバイル関連のものを含む)により、今後数年にわたって話題になるような強力なユースケースが現れることを期待しています。

実用的なアイデア

アンケートの結果、私の解釈、そして予測について見てきました。 では、これらに関して何をすればよいのでしょうか? もちろん、皆さんに何らかの義務があるわけではありません。しかし、この記事の締めくくりに、これらのテクノロジーとオープンソースの波を活用するのに役立つ実用的なアイデアをいくつか紹介したいと思います。

以下は、この記事を読んだ後に実践に移せる実用的な 6 つのアイデアです。 まだ活用していない気に入ったアイデアを選び、Python 分野でのさらなる成功に役立つかどうかをご検討ください。

アイデア 1: uv を学習する

Python パッケージ管理ツールである uv は、導入された年に 0% から 11% へと驚異的な成長を遂げました(また、この成長は 2025 年も明らかに継続しています)。 この Rust ベースのツールは、皆さんがこれまで耳にしたと思われる多くの最も重要なツールの能力をすべて持っており、優れたパフォーマンスと優れた機能を備えています。

マシンに Python が必要なら、 run uv venv venv を実行するだけで最新の安定リリースのインストールと仮想環境の作成が完了します。 できることはそれだけではありません。 uv のすべてを知りたい方は、Talk Python で配信された第 2 世代 uv に関する Charlie Marsh とのインタビューをご覧ください。

uv をインストールする場合は、スタンドアロン版インストーラーを使用してください。 スタンドアロン版では uv を自己管理させ、時間の経過とともに改善することができます。

アイデア 2: 最新の Python を使用する

83% の回答者が最新バージョンの Python を使用していないことを確認しました。 その 1 人にならないようにしましょう。 仮想環境を使用するか、コンテナーを使用して最新バージョンの Python をインストールしてください。 それには uv を使用するのが最も手っ取り早いです。なぜなら、uv はシステムの Python やその他の構成に影響しないからです(アイデア 1 を参照してください!)。

Docker コンテナーでデプロイや開発を行う場合は、最新バージョンの Python 3.13 をセットアップして以下の 2 行を実行してください。

RUN curl -LsSf https://astral.sh/uv/install.sh | sh
RUN uv venv --python 3.13 /venv

私のようにローカルの仮想環境で開発する場合は、RUN キーワードを削除し、uv を使用して環境を作成してください。 当然ながら、Python の新しいメジャーバージョンのリリースに合わせてバージョン番号を更新してください。

これを行うと、パフォーマンス上のメリットから言語機能まで、モダンな Python の潜在能力をフルに活用できるようになります。

アイデア 3: エージェント型 AI を学習する

まだエージェント型 AI を試していない方は、ぜひ試してみましょう。 AI や LLM を避ける開発者がいる理由は分かります。 第一に、著作権に関する合法性が疑わしいということがあります。 環境への害は実際に存在し、開発者の雇用と自律性に対する脅威は見過ごしてはなりません。 しかし、チャットボットだけでなく、エージェント型 AI 向けのトップレベルのモデルを使用すれば、生産性を大幅にアップさせることができます。

バイブコーディングを勧めているわけではありませんが、 単純な作業を自動化できるライブラリやパッケージ、もしくは CLI ツールがあればいいのにと思ったことはありませんか? そのような作業をエージェント型 AI に任せれば、メインのアプリケーションや作業時間について技術的負債を発生させることはありません。 生産性が大幅に向上します。

ここでよくあるもう一つのミスは、一番安価なモデルまたは無料モデルで試してしまうことです。 大きな効果を得られなかったら、それを理由に「やっぱり。それほど役に立たない。 適当な結果を返すし、間違っていることもある」などと判断してしまいます。 許す範囲で最高のモデルを選択し、本気で試すのであれば月額 10 USD か 20 USD を支払い、実際に実現できそうなことを探ってみてください。

JetBrains は最近、Junie という JetBrains IDE 用のエージェント型コーディングアシスタントをリリースしました。 JetBrains IDE を使用している方は、ぜひお試しください

アイデア 4: 基本的な Rust を読めるように学習する

Python 開発者は Rust を Python に代わるものではなく、それを補うものと考えて基礎を学習することを検討すべきです。 この分析で述べたように、Python エコシステムの最も重要な部分で Rust の重要性がますます高まっています。 Python 開発者から Rust 開発者に転向することは絶対にお勧めしませんが、基本的な Rust を読み、使用しているライブラリの動作を理解できるスキルは素晴らしい武器になるでしょう。

アイデア 5: スレッド処理の理解に努める

Python 開発者は概してスレッド処理や並行プログラミングの分野とは無関係に作業してきました。 Python 3.6 では素晴らしい async キーワードと await キーワードが言語に追加されましたが、 I/O がボトルネックになっている並行処理にしか適用されません。 たとえば、私はウェブサービスを呼び出す場合、HTTPX ライブラリを使用してその呼び出しを待機するかもしれません。 この種の並行処理では、レースコンディションなどのほとんどの障害を回避することができます。

現在、並行スレッド処理が Python に導入されようとしています。 3.14 では PEP 703 が Python に組み込まれることが公式かつ完全に承認されたため、真のスレッド処理の仕組みを理解しなければならなくなります。 これに伴い、ロック、セマフォ、ミューテックスの理解も必要になるでしょう。

苦労することにはなりますが、Python のパフォーマンスを劇的に向上させる素晴らしい機会でもあります。

2025 年の Python Language Summit では、講演の約 3 分の 1 が並行性とスレッド処理を何らかの形で話題にしていました。 これはまさに今度予見されることを表しています。

作成するすべてのプログラムに並行性やスレッド処理が必要なわけではありませんが、十分に普及すると予測されるため、動作を理解しておくことが重要となります。 Python による async に関して私が作成したコースがあります。そのコースに興味のある方はご覧ください。 また、JetBrains の Cheuk Ting Ho が「Faster Python: Concurrency in async/await and threading(Faster Python: async/await とスレッド処理における並行性)」というタイトルで素晴らしい記事を執筆しています。ぜひお読みください。

アイデア 6: 新人の存在を忘れないこと

最後になりますが、何かを構築したり共有したりする際は、必ず初心者にとって敷居の低いものにしましょう。 Python 開発者の半数は Python の使用経験が 2 年未満であり、その大半は何らかの形でプログラミングを経験した年数も 2 年未満です。 これも注目に値する事実だと思っています。

したがって、講演や執筆、パッケージ、ライブラリ、ツールの作成では、複数の Python ファイルの操作、仮想環境、依存関係の固定などについて長年共有されてきた知識があることを前提としてはいけません。

さらに詳細を知りたいですか? Python 開発者アンケートの全結果をこちらでご覧いただけます

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作者について

Michael Kennedy

Michael Kennedy

u003cspan style=u0022font-weight: 400;u0022u003eMichael is the founder of Talk Python and a PSF Fellow. Talk Python is a podcast and course platform that has been exploring the Python ecosystem for over 10 years. At his core, Michael is a web and API developer.u003c/spanu003e

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