意思決定者の「Kotlin 採用」を後押しするために

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Urs Peter(シニアソフトウェアエンジニア、JetBrains 認定 Kotlin トレーナー)によるゲスト投稿です。Urs は、より体系的な Kotlin スキルの構築を希望する開発者を対象とする KotlKotlin Upsukill Program(Kotlin スキルアッププログラム)も Xebia Academy で開講しています。

この記事は、実際のチームである開発者の好奇心をきっかけに会社全体が変革するまでの Kotlin の導入経緯を追った「Java 主体の環境で Kotlin の導入を成功させるための究極ガイド」連載記事の第 4 回です。

この連載に含まれる各回のタイトル:

  1. Java 開発者向け Kotlin 入門ガイド
  2. 実際のプロジェクトにおける Kotlin の評価手法
  3. 企業における Kotlin 導入・活用の推進

経営陣の説得: Kotlin のビジネスケースを構築する

大勢の Kotlin 支援者を獲得した後に説得力のあるビジネスケースを経営陣に提示するには、実際のコード例を示す段階から確かなデータや戦略的な考慮事項を示す段階に移行する必要があります。

市場の勢いと業界の検証

Kotlin は著しい成長を見せており、現在では世界中の 2,500 万人もの開発者がこの言語を使用しています。このことは、Kotlin が 2017 年に Google によって Android 開発の公式言語と宣言され、その後に Spring Boot に第一級市民として採用されて以来、継続的に導入されていることを表しています。

出典: KotlinConf 2025 基調講演

この勢いはかなり増しています。約 90% のバックエンド市場シェアを占める Spring Bootは、2025 年に JetBrains と戦略的パートナーシップを正式に締結しました。このことは Kotlin がエンタープライズ業界で生き残り、長期的に軌道に乗っていることを明確に示しています。

戦略的意思決定の誘導

以下の導入指標は Kotlin が市場で受け入れられていることを実証していますが、経営上の意思決定には包括的な費用対効果の分析が必要です。大規模な技術の導入には、トレーニング、ツール、および発生しうる移行作業への多大な投資が伴うものです。そのため、具体的なメリットと現実的な導入コストの両方を提示し、経営陣が純粋に技術的な意思決定ではなく、情報に基づく戦略的な意思決定を行えるようにすることが重要です。

Kotlin を採用することで得られる経営上のメリット

Kotlin を選択すると、以下のような経営上のメリットがあります。

メリット 詳細 経営/チームへの影響
コード量が約 30% 減少。コードの明確さが向上。 作成、読み取り、修正、および保守が約 30% 少なくなります。 ➜ 生産性が向上する。
➜ 保守性が改善する。
安全性機能によりバグが 25% 減少 Kotlin は初期状態で(特別なスキルなしで)null 安全性、安全な API、最適なデフォルト設定で欠陥を減らします。 ➜ 品質向上によって顧客満足度・開発者満足度が向上する。
➜ 新機能に費やせる時間が増加する。
➜ 開発期間が短縮される。
Kotlin という 1 つの新しい言語にのみ投資 既存のフレームワーク(SpringBoot、Micronaut、Quarkus など)を残せます。 ➜ フレームワークの知識が守られる。
AI により適した選択肢 Kotlin はノイズが少なく、明確、かつ意図が読み取りやすいなどの特徴があり、LLM のコード処理にうまく適合するため、より AI に適しています。 ➜ コーディングへの影響力を増している AI によって生産性が向上する。
Java との完全な相互運用性 Kotlin には Java との完全な相互運用性が備わっているため、ライブラリを書き直す必要がありません。 ➜ Java を前提とした投資が守られる。
十分なサポート JetBrains、Google、Meta といった有力な市場参加者によってサポートされています。 ➜ 将来が約束された選択肢である。
段階的な導入 Kotlin は段階的な移行パスに対応しています。 ➜ 「ビッグバン」方式が不要である。
開発者の満足度向上 アンケートや調査によると、Kotlin 開発者の開発者エクスペリエンスと仕事への満足度は確実に高まっています。 ➜ 新しい開発者を引き寄せる。
➜ 定着率が向上する😃😃😃。
監査の迅速化、規制遵守の強化 Kotlin は型安全性、不変性、および明確なデータ構造を特徴としているため、システムの追跡、検証、および認証がより容易になります。これらの特徴は、規制分野全体で透明性と信頼性に優れたソフトウェア開発工程を実現するのに役立っています。実際の例については、Kotlin in Payment Gateways and Fintech: A Strategic Fit for 2026 Architectures(決済ゲートウェイとフィンテックにおける Kotlin: 2026 年のアーキテクチャへの戦略的適合)をご覧ください。 ➜ 内部・外部監査が容易になる。  
➜ 規制遵守にかかる労力とリスクが低減する。 
➜ 組織の透明性が向上する。

開発者の満足度に関するコメント

私自身のキャリアを振り返ると、キャリア上は無難な選択肢に思われた Java への執着をやめたことで大きな見返りがありました。私は日々楽しく作業でき、自分が達成したいことを最善、簡潔、安全、かつ生産的に表現するのに役立つ言語に大きく支えられています。 

実際、個人的には Kotlin を使用することで、より幸せな開発者(人間 ;-)?)になれました。これは主観ではありますが、開発者の満足度データからは明白にこれと同じ状況が読み取れます。

Java から Kotlin に移行するバックエンド開発者は、すべての主要な業界アンケートで劇的に満足度が向上しています。 

  • Stack Overflow の開発者アンケートのデータでは、Kotlin が約 63% の満足度で最も愛用されている言語の上位 5 位に常に入っており、Java の約 54% の評価を大幅に上回っています。
  • Mercedes-Benz.io のバックエンドチームは「Java よりも大幅に簡潔なコードで、ボイラープレートが減少して可読性が向上している」一方、マイクロサービスアーキテクチャで目に見えて生産性が向上しています。
  • Java を 15 年経験しているバックエンド開発者の Tyler Russell 氏は Kotlin を 4 年間使用した結果、「Kotlin をとても気に入っています。生産性が損なわれるどころか、大幅に向上している気がします」と述べており、Java には戻る気はまったくありません。

企業がバックエンドを Java から Kotlin に移行していることは、このような満足度の向上がエンタープライズ環境全体にまで実質的に広がっていることを示しています。 

Kotlin の採用コスト / 投資収益率:

Kotlin を選択する場合、以下のような投資が必要です。 

投資  説明 期待される収益 / 影響
開発者のトレーニング トレーニングセッション、ワークショップ、オンボーディング資料。 ➜ Kotlin 初心者の開発経験者の生産性が 2~3 週間で向上する。
➜ 約 1~4 か月で必要な ROI を達成できる。
コードベースの移行(必要な場合) 段階的な書き換えまたは Kotlin/Java が混在するコード構成の戦略が必要です。 ➜ ビッグバン方式の書き換えは不要である。
➜ デリバリー速度を維持できる。
知識の共有 社内の Kotlin Champions、ブラウンバッグセッション、サンプルを格納した共有リポジトリ。 ➜ チーム全体で導入が促進される。
➜ ベストプラクティスを再利用できる。
雇用 / スキルアップ Kotlin 経験者を採用するか、既存の Java 開発者をスキルアップさせます。 ➜ 定着率が上がります。
➜ 幅広い人材を確保できます。

Kotlin の導入を検討する際によくある懸念事項の 1 つには、Kotlin 開発経験者が不足していると感じられることがあります。しかし、これは障害にはならず、むしろ戦略上有利になる可能性があります。

  • ✅ Java 開発者の迅速なスキルアップ
    Kotlin は Java 開発者が直感的に扱えるように設計されています。適切な指導があれば、ほとんどの開発者はわずか 2~3 週間以内に生産性が向上します。
  • ✅ Kotlin は優秀な開発者を引き寄せる
    積極的に Kotlin を習得する人は、往々にして好奇心旺盛、進歩的、および品質重視というエンジニアリングチームに求められる性質を備えています。
  • ✅ Kotlin は会社のイメージを強化する
    Kotlin を導入してモダンな未来志向のテクノロジーを採用していることを示し、トップクラスの人材を引き寄せることができます。
  • ✅ Kotlin は開発者の満足度と定着率を向上させる

Kotlin 開発者は一貫して仕事の満足度が向上したと述べているため、熱心で意欲のあるチームメンバーを維持しやすくなります。

つまり、Kotlin は単に技術的な理由で賢明な選択肢になっているわけではなく、人材という観点で戦略的に選ばれているなのです。

この連載の次の記事

開発者の説得から意思決定者の説得にトピックを移します。次の記事では、Kotlin を導入するための説得力のあるビジネスケースを実際のデータと客観的に評価できる結果に基づいて作る方法をご紹介します。開発者にとってのメリットを経営陣の議論に発展させる方法、生産性向上をコスト削減に関連付ける方法、さらには Kotlin が単なる技術改良ではなく、チームと会社の両方にとって戦略的な手段である理由を証明する方法について学びます。

オリジナル(英語)ブログ投稿記事の作者:

Urs Peter

Urs は経験豊富なソフトウェアエンジニア、ソリューションアーキテクト、カンファレンス講演者、トレーナーであり、主に Kotlin と Scala が関わるレジリエントで拡張可能、かつミッションクリティカルなシステムの構築に 20 年以上携わってきました。

コンサルタント業の傍ら、Kotlin と Scala の言語コースからマイクロサービスやイベント駆動型アーキテクチャといったアーキテクチャ関連トレーニングに至る多種多様なコースのトレーナーと作成者としても情熱的に活動しています。

元々人との交流を好む性格であり、ミートアップやカンファレンスで他の開発者と知識を共有し、刺激し合うことを楽しんでいます。Urs は JetBrains 認定 Kotlin トレーナーです。

Alyona Chernyaeva

Alyona Chernyaeva

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