Python Web フレームワーク比較: Django・Flask・FastAPI の違いと選び方

Python の Web フレームワークを検索すると、Django、Flask、FastAPI の 3 つの名前が必ず出てきます。 最新の Python 開発者アンケートの結果では、これら 3 つのフレームワークが Python を使ったバックエンド Web 開発の選択肢の中で上位を占めていることが確認されています。
これら 3 つのフレームワークはどれもオープンソースであり、最新バージョンの Python に対応しています。
しかし、どの Web フレームワークが自分のプロジェクトに最適なのかを判断するにはどうすればよいのでしょうか? ここではそれぞれのメリットとデメリットを確認し、それぞれの違いを見てみましょう。
Django の特徴とおすすめの用途
Django は、Instagram、Spotify、Dropbox などの類に使用される「バッテリー同梱」の(初期状態でそのまま使える)フルスタック Web フレームワークです。 「限られた開発期間で完璧なシステムを構築したい開発者向けの Web フレームワーク」と言われる Django フレームワークは、堅牢な Web アプリをより簡単かつ迅速に構築できるように設計されました。
2005 年に初めてオープンソースプロジェクトとして公開された Django は、20 年後の今も活発に開発されている成熟したプロジェクトです。 ソーシャルメディア、eコマース、ニュース、娯楽サイトなど、多数の Web アプリケーションに適しています。
Django はモデル・ビュー・テンプレート (MVT) アーキテクチャに従い、各コンポーネントに特定の役割を持たせます。 モデルがデータの処理とその構造の定義を行い、 ビューがリクエストを処理してモデルから必要なデータを取り出すビジネスロジックを管理し、 最後にテンプレートがそのデータをエンドユーザーに表示します。これは、モデル・ニュー・コントローラー(MVC)アーキテクチャのビューと同様です。
フルスタック Web フレームワークである Django は、Web アプリ全体(データベースから HTML や JaveScript フロントエンドまでのすべて)の構築に使用できます。
または、Django REST Framework を使用して Django とフロントエンドフレームワーク(React など)を組み合わることで、モバイルやブラウザーベースのアプリを構築することもできます。
事前に必要な知識、体系的な学習パス、その他のリソースが掲載された包括的な Django ガイドを参照し、フレームワークの習得に役立ててください。
Django のメリット
Django は以下を含め、最も広く使用される Python Web フレームワークの 1 つであり続けている理由がたくさんあります。
- 多彩な機能:「バッテリー同梱」のアプローチを採用している Django は、認証、キャッシュ処理、データ検証、セッション管理などの機能を組み込みで提供しています。 「Don’t Repeat Yourself」(DRY)原則に従っているため、開発スピードを高め、バグを軽減します。
- 容易にセットアップ可能: Django は組み込みの機能があるため、依存関係の管理が簡単で、外部パッケージの必要性が少なくなっています。 このことは最初のセットアップを効率よく実施し、互換性の問題を最小限に抑えるのに役立っています。そのため、迅速に作業に着手できます。
- データベースのサポート: Django の ORM(オブジェクト関係マッピング)によってデータを単純明快に処理できるため、SQL の知識がなくても SQLite、MySQL、PostgreSQL などのデータベースを操作できます。 ただし、MongoDB などの非リレーショナルデータベースにはあまり適していません。
- セキュリティ: クロスサイトスクリプティング(XSS)、SQL インジェクション、クリックジャッキングなどの一般的な脆弱性に対する保護が組み込まれているため、最初からアプリを素早く安全に保護できます。
- 拡張性: Django はモノリシックでありながら、アプリケーションアーキテクチャ(ビジネスロジックとテンプレート)を水平方向に拡張し、キャッシュ処理によってデータベースの負荷を下げ、非同期処理によって効率を改善することができます。
- コミュニティとドキュメント: Django には大規模で活発なコミュニティと詳細なドキュメントがあり、チュートリアルとサポートをいつでも利用することができます。
Django のデメリット
メリットは多数ありますが、次の Web アプリ開発では以下のような理由で Django 以外の選択肢を検討した方が良い場合もあります。
- 重い: 小さなアプリの場合、「バッテリー同梱」の設計では無駄に機能が多すぎる可能性があります。このような場合は、Flask などの軽量なフレームワークの方が適しているかもしれません。
- 学習難易度の高さ: Django には豊富な機能があるため、必然的に最初の段階での学習難易度は高くなっています。ただし、新しい開発者を支援するリソースは多く存在します。
- パフォーマンス: Django は Flask や FastAPI などの他のフレームワークよりも全体的に低速です。ただし、組み込みのキャッシュ処理や非同期処理を使用して応答時間を改善することはできます。
Flask の特徴とおすすめの用途
Flask は Python ベースのバックエンド Web 開発用マイクロフレームワークです。 ただし、「マイクロ」という言葉に騙されてはいけません。 ここで説明するように、Flask は小さな Web アプリに限定されたフレームワークではありません。
Flask は、Werkzeug WSGI(Web Server Gateway Interface)をベースにしたシンプルなコア機能と Jinja2 テンプレートを使用する設計になっています。 Flask を使用している有名企業には、Netflix、Airbnb、Reddit などが挙げられます。
Flask は元々エイプリルフールの冗談として作られたもので、Django のリリースから数年後の 2010 年にオープンソースプロジェクトとしてリリースされました。 マイクロフレームワークのアプローチは Django のアプローチとは根本的に異なります。 「バッテリー同梱」スタイルを採用している Django は Web アプリの構築に必要となる可能性のある多数の機能を備えていますが、Flask の方がはるかに軽量です。
マイクロフレームワークの基板となる考えは、人の好みは千差万別であるため、開発者は自分のコンポーネントを自由に選択できるべきだというものです。 このため、Flask にはデータベース、ORM(オブジェクト関係マッパー)、または ODM(オブジェクトドキュメントマッパー)は含まれていません。
Flask で Web アプリを構築する場合、最初から決められていることはほとんどありません。 このことは大きなメリットとなる場合があり、以下ではそれを説明します。
Flask のメリット
弊社の開発者エコシステムの現状アンケートから、Flask の使用率は過去 5 年間にわたって安定して伸び続けており、2021 年には Django を初めて追い抜いていることが分かっています。
Flask をバックエンド Web フレームワークに選択するのには、以下のようないくつかの理由があります。
- 軽量な設計: Flask はミニマリストなアプローチを採用した Django に代わる柔軟なフレームワークであり、Django では機能が多すぎると思われる比較的小さなアプリケーションやプロジェクトに最適な選択肢となっています。 ただし、Flask は小さなプロジェクトに限定されているわけではなく、必要に応じて拡張可能です。
- 柔軟性: Flask では、データ処理やユーザー認証といった基本機能のライブラリとフレームワークを選択できます。 このため、プロジェクトに最適なツールを選択し、前例のない方法で拡張することができます。
- 拡張性: Flask はモジュール方式の設計の設計になっており、水平方向の拡張を簡単に行えます。 NoSQL データベースレイヤーを使用することで、さらに拡張性を強化できます。
- 学習が容易: Flask の設計はシンプルであるため、容易に学習できます。ただし、比較的複雑なアプリを構築する場合は拡張機能を探す必要が生じるかもしれません。
- コミュニティとドキュメント: Flask には広範な(多少技術的な場合もある)ドキュメントと明快なコードベースが備わっています。 コミュニティの規模は Django より小さいものの、Flask は活発に開発されており、安定した伸びを見せています。
Flask のデメリット
Flash は多くのメリットをもたらしますが、次の Web 開発プロジェクトに採用することを決める前に以下のような点を考慮する必要があります。
- すべて自分で用意する必要あり: Flask のマイクロフレームワークデザインと柔軟性を活用する場合、データ検証、セッション管理、キャッシュ処理など、主な機能の大半を各自で処理する必要があります。 この柔軟性はメリットとなり得ますが、既存のライブラリを探したり、機能をゼロから構築したりする必要があるため、開発プロセスが遅延する可能性があります。 また、依存関係を長期的に管理し、依存関係と Flask との互換性を維持できるようにする必要があります。
- セキュリティ: Flask には最小限のセキュリティ機能が組み込まれています。 クライアントサイドの Cookie を保護する以外は、Web セキュリティのベストプラクティスを自分で実践し、必要に応じて更新を適用しながら、使用する依存関係のセキュリティを確保する必要があります。
- パフォーマンス: Flask のパフォーマンスは Django よりも若干優れていますが、FastAPI には劣っています。 Flask にはある程度の ASGI サポート(FastAPI では標準)が備わっていますが、WSGI により密接に結び付いています。
FastAPI の特徴とおすすめの用途
その名称から想像できるように、FastAPI は Python を使用する高パフォーマンスな Web API を構築するためのマイクロフレームワークです。 FastAPI は 2018 年に初めてリリースされた比較的新しいオープンソースプロジェクトではありますが、すぐに開発者に普及し、2021 年以降は最も一般的な Python Web フレームワークのリストで 3 位を維持しています。
FastAPI は ASGI(Asynchronous Server Gateway Interface)サーバーである Uvicorn と、Web マイクロフレームワークである Starlette を基盤としています。 FastAPI には、Web API の構築を合理化するデータ検証、シリアル化、およびドキュメント作成の機能が備わっています。
マイクロフレームワークの作者は、FastAPI を開発する際に数多くのさまざまなフレームワークとツールを扱った経験を活かしました。 Django はフロントエンド JavaScript Web フレームワーク(React や Vue.js など)が頭角を現わす前に開発されていましたが、FastAPI はこの状況を念頭に設計されています。
過去数年前に OpenAPI(旧称 Swagger)が API の構造化とドキュメント化の形式として登場したことで、FastAPI が活用できる業界標準が確立されました。
RESTful API の作成という暗黙的なユースケースを除き、FastAPI はリアルタイムの応答が必要とされるメッセージングプラットフォームやダッシュボードなどのアプリケーションに最適です。 高パフォーマンスと非同期への対応力を備えており、機械学習モデル、データ処理、解析などのデータを多用するアプリに適しています。
FastAPI のメリット
弊社の開発者エコシステムの現状アンケートで最初に FastAPI 独自のカテゴリができたのは、14% の回答者がこのマイクロフレームワークを使用していると答えた 2021 年のことでした。
それ以来、使用率は 20% に増加し、それと同時に Flask と Django の使用がわずかに減少しました。
開発者が FastAPI を選択しているのには、以下のようないくつかの理由があります。
- パフォーマンス: 速度を優先して設計された FastAPI は、非同期処理と双方向 Web ソケット(Starlette によって実現)をサポートしています。 ベンチマークテストでは Django と Flask のパフォーマンスを上回っており、トラフィックの多いアプリケーションに最適です。
- 拡張性: Flask と同様に、FastAPI は高度にモジュール化されているため、拡張しやすく、コンテナー化によるデプロイに最適です。
- 業界標準への準拠: FastAPI は OAuth 2.0、OpenAPI(旧称 Swagger)、および JSON スキーマに完全に対応しています。 そのため、最小限の労力で安全な認証を実装し、API ドキュメントを生成することができます。
- 使いやすさ: FastAPI では型ヒントと検証に Pydantic を使用して型チェック、自動補完、およびリクエスト検証を行えるため、開発を高速化できます。
- ドキュメント: FastAPI には膨大な量のドキュメントが備わっており、サードパーティのリソースも増え続けているため、あらゆるレベルの開発者が使用できます。
FastAPI のデメリット
FastAPI を次のプロジェクトに使用する最適なフレームワークと判断する前に、以下の点に注意してください。
- 成熟度: FastAPI は比較的新しいテクノロジーであるため、Django や Flask ほどは成熟していません。 そのコミュニティは比較的小規模で、あまり広く使用されていないため、ユーザーエクスペリエンスもそれほど合理的ではありません。
- 互換性: FastAPI はマイクロフレームワークであるため、フル機能のアプリを構築するには追加機能が必要です。 Django や Flask よりも対応ライブラリの数が少ないため、独自の拡張機能を開発する必要性が生じる場合があります。
Python Web フレームワークの選び方
では、どの Python Web フレームワークが最適と言えるのでしょうか? プログラミングに関する多くのものがそうであるように、その答えは状況によって異なります。
最適な選択肢は、どのようなアプリを構築しようとしているのか? 何を優先しているのか? プロジェクトが将来的にどのように成長することを期待しているのか?といった質問に対する答えによって決まります。
一般的な 3 つの Python Web フレームワークにはそれぞれの強みがあるため、自分のアプリケーションの状況に照らし合わせてそれらを評価することで、最適な決断を下すことができるでしょう。
Django はすぐに使用できる標準的な Web アプリ機能が必要な場合に魅力的な選択肢であり、比較的堅牢な構造を必要とするプロジェクトに適しています。 ORM によってデータ管理が単純化され、セキュリティ機能が組み込まれているため、リレーショナルデータベースを使用している場合は特にそのメリットが効果を発揮します。 ただし、機能が豊富であるため、小さなプロジェクトや単純なアプリケーションには過剰に感じるかもしれません。
その一方、Flask にはより大きな柔軟性が備わっています。 ミニマリスト設計であるため、開発者は必要な拡張機能とライブラリを選ぶことができ、機能をカスタマイズする必要のあるプロジェクトに適しています。 このアプローチは、要件が急速に変化したり増えたりする可能性のあるスタートアップや MVP に適しています。 Flask を使い始めるのは簡単ですが、比較的複雑なアプリケーションの構築にはさまざまな拡張機能を探さなければならないことは心に留めておいてください。
FastAPI は、API ファーストのプロジェクトや機械学習プロジェクトのようにスピードが重視される場合には強力な選択肢となります。 型ヒントなどの最新の Python の機能を使用して、自動データ検証やドキュメント作成を可能にします。 FastAPI はマイクロサービスやデータ駆動型 API など、高いパフォーマンスが求められるアプリケーションに優れた選択肢です。 とはいえ、Django や Flask ほどは組み込みの機能が充実していないため、追加機能を手動で実装する必要性が生じる可能性があります。
Django と他の Web フレームワークのより詳しい比較については、以下を含む他のガイドをご覧ください。
Python Web フレームワークの概要
Django | Flask | FastAPI | |
設計理念 | リレーショナルデータベースを使用する Web アプリ用に設計されたフルスタックフレームワーク。 | 軽量なバックエンドマイクロフレームワーク。 | Web API を構築するための軽量なマイクロフレームワーク。 |
使いやすさ | 「バッテリー同梱」アプローチが採用されているため、必要なものが最初から完備されており、開発スピードが上がります。 とはいえ、提供されている機能の数が多いため、最初の段階では学習に苦労する可能性があります。 | Flask はマイクロフレームワークであるため、最初に知っておくべきコードは比較的少なくなっています。必要なライブラリと拡張機能を選択できる高度な柔軟性が備わっています。 ただし、組み込みの機能の数が少ないため、より多くの外部依存関係を必要とします。 | Flask と同様、組み込みの機能は Django よりも少なくなっています。 型ヒントと検証によって開発スピードを高め、エラーを減らすことが可能です。 OpenAPI に対応しており、API リファレンスドキュメントを自動生成できます。 |
拡張性 | 対応パッケージ数は 3 つの中で最大です。 | 大量の対応パッケージがあります。 | 対応パッケージは Flask または Django ほどはありません。 |
パフォーマンス | 十分ですが、Flask や FastAPI ほどは高速ではありません。 | Django よりは若干高速であるものの、FastAPI ほどのパフォーマンスはありません。 | 3 つの中で最速です。 |
拡張性 | モノリシックな設計であるため、拡張性に限界が生じる場合があります。 非同期処理をサポートしているため、高負荷時のパフォーマンスを改善できます。 | 軽量なモジュール式の設計になっているため、高度に拡張可能です。 | 軽量なモジュール式の設計になっているため、高度に拡張可能です。 |
セキュリティ | 多数のサイバーセキュリティ対策が備わっています。 | クライアントサイド Cookie がデフォルトで保護されています。 それ以外のセキュリティ対策は追加する必要があり、依存関係の脆弱性をチェックする必要があります。 | 初期状態で OAuth 2.0 がサポートされています。 それ以外のセキュリティ対策は追加する必要があり、依存関係の脆弱性をチェックする必要があります。 |
成熟度 | 2005 年からオープンソース化されており、定期的に更新されています。 | 2010 年からオープンソース化されており、定期的に更新されています。 | 2018 年からオープンソース化されており、定期的に更新されています。 |
コミュニティ | 大規模で活発なコミュニティが存在します。 | 活発であり、Flask の人気が続く限りは拡大し続ける可能性があります。 | Django または Flask より規模は小さいです。 |
ドキュメント | 更新頻度が最も高く、信頼性の高い公式ドキュメントが存在します。 | 豊富な公式ドキュメントが存在します。 | 新しいため、公式ドキュメントの更新頻度は最も低くなっています。 |
その他の記事
- 2024 年 Django の現状
- Django Web フレームワークとは?
- Django の学習方法
- Django ビュー入門
- Django テンプレートの究極ガイド
- Django プロジェクトのアイデア
PyCharm で Web 開発プロジェクトを始めましょう
主に使用しているフレームワークを問わず、1 つの IDE ですべての必須 Web 開発ツールにアクセスできます。 PyCharm は Django、FastAPI、および Flask のサポートを組み込みで提供しているだけでなく、React、Angular、Vue.js などのフロントエンドフレームワークとの最高水準の統合も提供しています。
オリジナル(英語)ブログ投稿記事の作者: